活版印刷=言葉を伝えること

どうして活版印刷?

言葉は人に想いを伝えるための見えない道具です。 


 発端は、青森にお住まいの版画家竹林嘉子さんが2012年から行っている東日本大震災復興支援「竹林嘉子版画展」のお手伝いをさせていただいたことがはじまりまです。
 この版画展では決まって消しゴミ版画のワークショップを開催します。このワークショップに参加された皆さんは、できあがった消しゴムの版を紙に押した瞬間に浮かび上がってきた画を見て、どなたもとても嬉しそうにしています。その姿がとても微笑ましいです。
 私はその中で言葉を使って何かできないかなと考えていました。それで思いついたのが、参加者の方々が作られた消しゴム版画に言葉を添えることです。参加者の方にお声がけをして、葉書に版画の画を押していただき、それに言葉を添えて後日お送りするというものです。
 そのとき私は、書字が下手で読めない字を書くことから、古い中古の和文タイプライターの活字を使って一文字一文字押して言葉を紡いでいました。誰でもが読める識字性の高い文字。それもその人だけへの言葉を手作業でつくりだすこと。そのことをずっと考えていました。そして金属活字を組み合わせて文章を作る活版印刷に辿り着きました。
 

決して上手な仕事ではありません


 ほとんど全ての作業を手仕事で行なっています。自動機械は唯一自動印刷機デルマックス SX-B5 がありますが、それとて印刷の都度印刷工の感に頼る微妙な調整が必要とされます。活字の組み方、印刷の技術、製本の技術などは、短い期間専門の技術をお持ちの方に習いましたが、最後まで師事した方はおりませんので、ほとんど自分一人で見よう見まねで習得した技術です。
 ですから、決して上手な仕事ではありません。あるていどの数の印刷を行っても、一つひとつの作品が微妙に違います。印字にムラが出ることはしょっちゅうですし、誤植も多いです(正誤表で対応)。でも、精一杯作らせていております。
 


活字店があってこその活版印刷


 
 私が活版印刷を始めようと考えたときは、印刷機械はもちろん、活字もまったくありませんでした。最初にしたことは、活字屋さんに伺い、助言をいただき、五号明朝の活字を揃えることから始まりました。揃え方は、すだれに貼る見出し表の活字をひらがなが10本ずつ、そのほかは5本ずつとりあえず購入しました。それから、作品を作る度に必要な活字を活字店から購入して、徐々に活字を揃えてゆきました。
 もちろん予算にも限度があるので、時には古活字を揃えることがありますが、必要な都度活字を購入して作品を作っています。ですから、活字店がなくなるとこの工房の仕事が動かなくなります。
 


 
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